他社の宅建士に重要事項説明を頼んでも大丈夫?業務委託・従業者証・専任性を行政書士が解説!

◆よくある質問◆ 他社の宅建士に「重説だけ」頼んでいいの?

「うちには宅建士が少ないから、知り合いの不動産会社の宅建士さんに、
重説だけお願いしたいんだけど、これって大丈夫?」

現場でよく聞くお悩みです。

IT重説(オンラインでの重要事項説明)も広がり、
フリーランスや副業の宅建士の話も耳にするようになりました。
その一方で、宅建業法違反になるのではないか、
専任の宅建士の要件を満たさなくなるのではないか、と不安も多いところです。

この記事では、

  • 宅建業法35条(重要事項説明)・48条(従業者証明書)の基本
  • 他社の宅建士に重説を依頼できる条件と限界
  • 専任の宅建士が他社の重説を行うときの「専任性」の問題
  • 違反になりやすいNGパターンと、適法に運用するためのチェックポイント

を、不動産実務と行政書士の視点から、できるだけわかりやすく解説します。

 

宅建業法35条から読み解く「誰が重説できるのか」の基本

第35条のポイントをざっくり整理

まずは、宅建業法35条の大枠を押さえます。

宅地建物取引業者は、売買・交換・賃貸借の相手方等に対し、
契約成立までの間に、宅地建物取引士をして重要事項を記載した書面を交付し、
説明をさせなければならない。

大事なポイントは次の3つです。

  1. 説明を行うのは「宅地建物取引士(宅建士)」でなければならない
  2. 説明は契約成立までの間に行うこと
  3. 説明内容は書面(いわゆる35条書面)に記載し、その書面を交付して説明すること

ここまでは試験テキストにも出てくる基本中の基本ですが、
「宅建士なら誰でもいいのか?」という点が、今回のテーマの肝になります。

結論OK!でも「宅建士なら誰でもOK」ではない!その理由は?

条文だけを見ると、「宅建士をして説明をさせなければならない」としか書いておらず、
「その宅建業者の従業者でなければならない」とまでは書いてありません。

しかし、実務上は

  • 重要事項説明をする宅建士は、当該取引に関与する宅建業者の「従業者」であること
  • 従業者証明書の携帯・提示、従業者名簿への記載が伴っていること

が前提とされています。

 

なぜかというと、宅建業法48条では、

  • 宅建業者は、従業者に対して「従業者証明書」を携帯させなければ、その者を業務に従事させてはならない
  • 従業者は、取引関係者から請求があったときは、その証明書を提示しなければならない

と定められており、

重要事項説明も、典型的な「宅建業務」ですから、

  • 重説を行う宅建士は、必ず従業者証明書を携帯していること
  • 証明書の業者名は、当該取引に関与する宅建業者の商号であること

が求められています。

 

つまり、他社宅建士に重説を依頼する場合も、

  • その場面では「自社の従業者」であることを前提に、
    取引に関与する宅建業者名義で従業者証明書を交付すること

が必要なのです。

他社の宅建士に重要事項説明を依頼できる条件

単なる「代行」は原則NGになる理由

さらに押さえておきたいのは、

  • 「宅建士資格を持っているから」という理由だけで、
    自社と無関係の宅建士に重説を丸投げすることは、原則NG

ということです。

典型的なNG例としては、

  • 「重説代行業者」に、説明だけをオンラインでやってもらう
  • 取引とは関係ないフリーランス宅建士に、当日の説明だけをお願いする
  • 他社に勤める宅建士に、何の手当てもせずに重説だけ来てもらう

といったパターンが挙げられます。

これらは、

  • 説明をする宅建士が、自社の「従業者」として位置づけられていない
  • 従業者証明書も自社名で発行されていない
  • 自社による監督・指揮命令の関係が明確ではない

という点から、宅建業法違反として行政処分の対象になり得ます。

業務委託契約+従業者証で「従業者」として扱うパターン

一方で、すべての「他社宅建士による重説」がダメというわけではありません。

実務上は、

  • 他社の宅建士と業務委託契約を結び、
  • 自社の従業者として取り扱う(いわゆる「みなし従業者」として扱う)
  • 自社名で従業者証明書を交付し、従業者名簿にも記載する

という手当てをしたうえであれば、
他社の宅建士に重要事項説明を担当してもらうことは可能と考えられています。

この場合のポイントは、

  • 「雇用契約」である必要まではなく、業務委託契約でもよい
  • ただし、契約内容上、宅建業務についての指揮命令・監督関係が明確であること
  • 実態としても、自社の従業者として重説に従事していること

です。

つまり、単に「外部の専門家に説明を丸投げする」のではなく、
説明してもらう場面においては、自社の従業者として位置づけることが重要になります。

説明の責任はあくまで宅建業者に残る

ここで誤解しやすいのが、「外部の宅建士に頼んだから、責任もそちらで…」という発想です。

宅建業法上、

  • 重要事項説明義務を負っているのはあくまで「宅建業者」
  • 宅建士は、その業者の義務を履行するための「資格者」

という位置づけです。

したがって、

  • 外部の宅建士に重説をしてもらっても、
    説明の内容・適否についての責任は、元の宅建業者に及ぶ
  • 「業務委託しているからうちは知らない」という言い訳は通らない

ということになります。

ここを取り違えると、外部の宅建士任せになってしまい、
説明漏れや誤説明があったときに、思わぬ行政処分・損害賠償リスクを抱えることになります。

宅建業法48条と従業者証明書・従業者名簿の実務ポイント

他社宅建士を従業者として扱うときの名簿整備のイメージ

宅建業法48条では、宅建業者に対して、

  • 事務所ごとに従業者名簿を備え、
  • 従業者の氏名・従業者証明書番号などを記載し、
  • 請求があれば閲覧に供すること

を求めています。

他社の宅建士を重説要員として活用する場合も、
実務上は次のような対応が考えられます。

  • 自社と業務委託契約を結んだ宅建士を従業者名簿に記載する
  • 従業者証明書番号も、自社で付番したものを記載する
  • 実際に業務に従事した日・内容が分かるよう、社内で記録を残す

「名前だけ借りている」状態ではなく、
きちんと自社の従業者として管理されている実態が重要です。

他社の「専任宅建士」に重説を頼むときの専任性の問題

国交省運用指針が示す「専任」の意味

専任の宅建士について、国土交通省の運用指針では、

  • 「専任」とは、宅建業者の事務所に常勤し
  • 通常の勤務時間を勤務し
  • 専ら宅建業に従事する状態

であると説明されています。

さらに「ただし」と続き、

  • ただし、当該事務所が宅地建物取引業以外の業種を兼業している 場合等で、当該事務所において一時的に宅地建物取引業の業務が行われていない間 に他の業種に係る業務に従事することは差し支えないものとする。

となっています。

  • 一つの事務所に、基本的には「フルタイムで張り付いている」イメージ
  • 例外的に事務所が兼業している場合でかつ宅建業の時間外はその兼業の業務をしても良い

ということです。

「専ら宅建業に従事する状態」というのが解釈分かれるところであるものの、千葉県の窓口回答ベースでは副業(業務委託的も含む)は一切認められておりません。

 

適法に他社宅建士の力を借りるためのチェックリスト

最後に、他社宅建士に重説を依頼したいときの
チェックリストをまとめておきます。

  • 業務委託契約
    • 自社と宅建士(またはその所属会社)との間で業務委託契約を締結しているか
    • 契約書の中で、宅建業務に関する指揮命令・監督関係が明確か
  • 従業者としての取り扱い
    • 自社の従業者名簿に、当該宅建士を記載しているか
    • 自社名義の従業者証明書を交付し、重説時に携帯させているか
  • 責任体制
    • 重要事項説明書の作成内容を、自社で確認・承認しているか
    • 説明当日に、必要に応じて自社の担当者も同席しているか
  • 専任性への配慮(他社専任宅建士に依頼する場合) ※法解釈に議論の余地はあるものの、原則他社専任宅建士は重説を行わないのが無難
    • 相手方事務所での常勤性が損なわれない範囲の依頼か
    • 勤務時間外や休日に限定するなど、時間配分の工夫をしているか
    • 相手方会社の就業規則上の副業規定に抵触していないか
  • 記録の保存
    • 重説を担当した宅建士の氏名・従業者証番号・日時・物件名を記録しているか
    • 万一トラブルがあった場合に、説明内容を説明できる資料を保管しているか

これらを一つずつチェックしていけば、
「何となくグレーな運用」から一歩抜け出し、
説明責任を果たした形で他社宅建士の力を借りることができます。


まとめ:小さな会社こそ法令遵守を意識して運用を

他社の宅建士に重要事項説明を依頼することは、

  • 業務委託契約を結び
  • 自社の「従業者」として扱うための手当て(従業者証・名簿など)を行い
  • 責任はあくまで自社に残ることを自覚したうえで運用する

のであれば、一定の範囲で可能と考えられます。

一方で、

  • 「資格だけ借りる」
  • 「フリーランスに丸投げする」
  • 「専任宅建士に他社の仕事を大量に抱えさせる」

といった運用は、宅建業法35条・48条、専任性の観点から
行政処分のリスクが高く、避けるべきです。

特に、少人数で回している不動産会社ほど、
「つい手が足りなくて…」という理由でグレーな運用に陥りがちです。

  • 自社の重説体制が宅建業法に適合しているか
  • 他社の宅建士との業務委託契約の内容が適切か
  • 専任宅建士の勤務実態に問題がないか

など、不安な点があれば、早めに専門家へ相談されることをおすすめします。

松鵜不動産・行政書士事務所では、

  • 宅建業のコンプライアンスチェック
  • 業務委託契約書のリーガルチェック
  • 従業者名簿・従業者証明書の整備サポート

なども行っています。
「うちのやり方は大丈夫かな?」と感じたタイミングで、お気軽にご相談ください。

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