不動産屋との価格交渉の仕方【賃貸編】
前書き
賃貸物件を借りる時、また売買物件を買う時は、お客側の心理として「少しでも安く抑えたい」ということが言えるかと思います。
今回は初めて賃貸を借りる人でも実践出来るように、対大家、対不動産屋を前提とした効果的な価格交渉の仕方を解説します。
前提知識 価格交渉する相手を理解する
価格交渉するには、まずは交渉する相手と物件の種類への理解が必要です。
賃貸を探している方はおそらく不動産屋に行ったり、インターネット等で部屋探しを行なっていることでしょう。
不動産屋が入居者募集しているお部屋は様々ありますが、基本的には以下のように種類分けすることができます。
- 自社物件 不動産屋が物件を所有しており、入居者を募集をしている 当然直接話ができるので価格交渉しやすい
- 管理物件 大家から依頼を受け不動産屋が物件を管理しており、入居者募集をしている。不動産屋の営業を通して大家と価格交渉するかたちになる。
- 一般物件 所有者がたくさんの不動産屋に入居者募集を依頼しており、不動産屋はその中の1社として入居者募集をしている。 大家さんは「早く入居者を決めたい」と考えていることも多く交渉が通る可能性は高いが、他のお客と競合になりやすい。仲介営業は管理物件等と比べるとやる気がないケースもある。
- 他社物件 不動産屋が他社で募集している部屋の広告を転載して入居者募集をしている。 価格交渉する場合は自分→仲介営業→募集不動産業社の営業→大家の流れで交渉することになり、伝言ゲームになってしまいがち。
上から順に価格交渉しやすいと言えますが、いずれにしても、多くは不動産屋の仲介営業を通して大家と交渉することとなります。
よく不動産屋自体が、賃料や初期費用等を決められる裁量を持っていると思い込んでおられる方がおりますので、この点よくご理解ください。
価格交渉するのは初期費用か、家賃か。
一口に「価格交渉」とは言っても、初期費用を交渉するのか、毎月の賃料を交渉するのかは、自分の金銭事情に合わせて選んでいかなければなりません。
たまに何もかも安くしてくれ!と無策で交渉してくる方がいらっしゃいますが、仲介営業はまともに取り合ってくれないでしょう。
価格交渉するとしてもどちらか片方にすると良いですね。
具体的な初期費用の交渉方法
さて、まずは初期費用についてですが、これは比較的に価格交渉がしやすいものです。
大家さんは多少最初の実入が悪くなっても、入居してもらって長く住んで欲しいと思っているからです。
初期費用の内訳は以下のように分解することができます
- 礼金 大家に支払うお金ですが、実態は大家から不動産業者に支払う広告料の原資になることが多いです。なかには、大家の承諾なく礼金を上乗せてお客からもらい、後から大家に交渉してせしめる営業もいます。
- 敷金 大家に預かっておいてもらうお金で、交渉はできますが退去費用の前払金となるだけなので払っておいて損はないです。
- 前家賃 家賃は通常、月末翌月分払いになっているはずですので、契約時には前家賃が必要です。
- 仲介料 殆どの不動産屋は仲介料を家賃の1ヶ月分とうたっていますが、本来宅建業法上は、借主貸主それぞれに原則家賃の0.5ヶ月分しか請求できないことになっています。同意があればどちらか一方のみに家賃の1ヶ月分を請求することができるといった仕組みです。だからと言って「本来0.5ヶ月分でしょ!」と交渉しても「なら他所に行ってください」となるだけですので交渉は難しいです。
- 保証料 昔は連帯保証人をつければ部屋を借りれたところ、昨今はその連帯保証人すら支払いをしないといったことで大家に負担がかかる事例が相次ぎました。それで属性の悪いお客様には貸し渋りが起こっていたのですが、家賃保証会社の登場によって、大家も安心して貸せるようになり、借り手も画一的な保証会社の審査さえ通れば部屋を借りれることになりました。
- 鍵交換代 多くの不動産屋は、前入居者がコピーキーを持っている可能性があるため、新入居者へ鍵の交換をするよう求めますが、そうしたリスクを織り込めるのであれば交渉の余地があります。
- 家財保険料(借家人賠償) 入居中に設備を壊してしまったり、火災を起こしてしまった場合、天災被害にあって損害を受けた時の保険です。自分で見積もりをとって他社の保険に加入することで費用を抑えることが可能です
- その他(消臭、除菌作業など)消臭作業を見積もりに出してきたら勇気を持って断りましょう。ファブリーズでシュッシュするだけですから。
以上が初期費用の内訳ですが、合計するとおおむね家賃の5ヶ月分から6ヶ月分の初期費用が必要となります。
では営業マンに初期費用の見積もりを提示された後、いかにこれを安くしていくかですが、価格交渉のポイントは、何をどれだけ安くしたらその部屋に申し込むかを明確に伝えることです。
それから交渉してくれる営業マンと、権限を持つ大家向けのメリットも盛り込んで伝えておきます。
例えばこのように言います。
「今回、私が考えていた初期費用の予算は〇〇万円くらいでして、提示されたお見積もりだとどうしても予算的に厳しいのですが、初期費用のご相談はできませんでしょうか?例えば敷金と礼金の減額、それから前家賃のフリーレントをもしお願いできるようであればご紹介いただいた物件にしたいと思います。これから先長く住んでいきたいと考えておりますので、ぜひ大家さんに交渉していただけませんでしょうか?」
※フリーレント=家賃の無料期間のこと
このように交渉することで、「初期費用が安くなれば契約する」という営業視点のメリット、それから営業マンが大家さんと交渉してもらうときに、「長く住むから」という大家視点のメリットを提供して交渉を通しやすくすることができます。
たとえ全ての要望が通らなくとも、このように丁寧なお願いをすれば、いくらかの折衷案を出してくれることでしょう。
具体的な賃料交渉の仕方
賃料の交渉についても先ほどの例文と同じような形で伝えましょう。
「賃料が〇〇円になるなら申込する。」という明確な言い回しです。
「この部屋もう少し安くなりますか?」というようなあやふやな聞き方だと仲介営業に嫌われてしまいます。
それから賃料については、人気物件での交渉はまず無理だと思ったほうが良いでしょう。
そして交渉可能な物件であっても、極端な減額は望めません。
経験則では賃料総額5%程度の減額交渉であれば通りやすい印象です。
最後に
価格交渉はやはり営業の頑張りと、大家さんの気分次第というところがあります。
交渉したせいで気分を害して貸してくれなくなることもありうる諸刃の剣でもあります。
松鵜不動産・行政書士事務所では、こうした業界の事情を踏まえたうえで、皆様のお部屋探しをお手伝いしております。初めて引越しされる方や諸々ご不安な方には、士業としての視点から各種契約条件の効果・リスクを丁寧にわかりやすくご説明して、ご納得いただいた上で契約いただいております。
どうぞご安心して当事務所へご相談ください。